健康保険で使える「高額療養費制度」とは?具体的な上限額まで解説

医療費の家計負担が重くならないよう、健康保険に含まれている制度の1つが「高額療養費制度」。

たまたま複数の治療を行ってしまった月などは、高額な医療費がかかりそうで出費が不安になりますが、高額療養費制度があることで、一定の上限以上の支払いがなくなります。

非常に便利なこの制度ですが、対象となる治療や薬にかかる医療費の自己負担上限は、どのように決まっているのでしょうか?

岡田 由美子

実は、年齢や年収により上限額が異なってきますので、本記事で具体的に解説します!

自己負担となる医療費はいくらかを把握した上で、病気やケガの場合の保障を確保するのが得策です。

目次

高額療養費制度とは?

医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月の上限額を超えた場合超えた額があとで払い戻される制度です。

1か月の考え方は、1日から末日までです。

岡田 由美子

つまり同一の月に、例えば胃の手術を受け、目の病気で眼科にかかり、足を骨折して治療など、高い医療費がかかったとしても、この金額を超える分は、払わなくていいですよという制度です。

具体的な上限額は?

上限額は、年齢や所得に応じて定められています。具体的にみてみましょう。

(出典)厚生労働省保険局

【事例1】

  • 69歳以下
  • 年収500万円
  • 1か月の世帯の医療費が150万円かかった場合

上記の表の「ウ」の計算式にあてはめて計算します。

80,100円+(150万円-267,000)×1%=92,430円

つまり、実際には150万円かかったわけですが、自己負担は92,430円でよいわけです。

(出典)厚生労働省保険局

【事例2】

  • 70歳以上
  • 年収は一般

外来は、個人ごとに月18,000円までが自己負担世帯ごとに57,600円までが自己負担となります。

医療費の負担を更に軽減するしくみ

過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」該当となり、上限額が下がります

具体的には、下記の表で確認しましょう。

(出典)厚生労働省保険局

【事例3】

先程の事例1では、自己負担は92,430円でした。

過去12か月以内に3回以上、92,430円の医療費を払った場合、4か月目からは44,400円の負担でいいですよ、というわけです。

高額療養費制度の手続きは?

高額療養費制度は、ご自身が加入している公的医療保険に支給申請書を提出または郵送することで支給を受けられます。

公的医療保険は、健康保険組合・協会けんぽの都道府県支部・市町村国保・後期高齢者医療制度・共済組合など、職業やお勤め先によって異なります。保険証で確認しましょう。

岡田 由美子

ご加入の公的医療保険によっては、自動的に高額療養費を口座に振り込んでくれる場合もありますが、基本的には手続きが必要と覚えておきましょう。

また、高額療養費の払い戻しには3か月以上かかるため、医療費が高額になることが事前に分かっている場合は、あらかじめ「限度額適用認定証」を提出することで自己負担限度額までの支払いで済みます

まとめ

「自己負担となる医療費+健康保険の対象とはならない支出」に備えて、病気やケガの保障を準備するのが得策です。健康保険の対象とはならない支出とは、入院時の差額ベッド代、病院食代、レンタルの寝間着やタオル代などです。

入院すると、ご家族に着替えを持ってきてもらい、洗濯物を持ち帰ってもらうことが想定されます。ご家族が病院に通うための交通費や、ご自身が退院してからの通院にかかる交通費なども、視野に入れておきましょう。

入院中に仕事をお休みすると、出社する時に菓子折りを持参する場合も多いでしょう。そのお金もかかるわけです。

生命保険文化センターの調査によると、入院した場合の1日あたりの自己負担額の平均は、23,300円です。

(出典)生命保険文化センター「1日あたりの入院費用(自己負担額)はどれくらい?」

人生100年時代、「長生きして病気やケガをし、長期入院」という事態への備えを、しっかり考えることが大切です。

執筆:2022年3月

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この記事を書いた人

岡田 由美子(おかだ ゆみこ)のアバター 岡田 由美子(おかだ ゆみこ) ファイナンシャル・プランナー、DCアドバイザー

中立公正な立場や視点で、執筆、セミナー講師、個別相談受けをしています。
わかりやすい説明、豊富な知識や経験を元にした内容が好評で、全国のお客さまから多数の指名をいただいています。

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